About -プロジェクトの紹介
プロジェクトについて知りたい方に向けた基本的な情報として、
活動の背景や目的、これまでの取り組み等の情報をまとめています。
プロジェクトの紹介
プロジェクトの始まり
2013年から、小須戸地域で作家の招聘(アーティスト・イン・レジデンス)事業を始めました。
プロジェクトを立ち上げたきっかけは水と土の芸術祭2012 参加作家・南条嘉毅さんの「町屋ギャラリー薩摩屋」での作品展示でした。
芸術祭での南条さんとの交流を機に、芸術祭終了後もアートを中心とした地域・アーティスト・来訪者との交流を継続することを目指して2013 年に「薩摩屋ARTプロジェクト2013」を開催し、2014年以降は小須戸本町通りに新たに出店した店舗を中心に複数の会場でアート作品を展示公開する「小須戸ARTプロジェクト」として継続してきました。
振り返れば参加アーティストは20名以上、町中の様々な会場で、延べ40点以上の作品が制作・展示されています。
アーティストの招聘と作品展示
プロジェクトのメインは地域外から招いたアーティストによる滞在制作と作品の展示公開です。
アーティストがそれぞれの視点で地域をリサーチし、信濃川舟運の歴史や小須戸縞の機業、花卉栽培等の特色を踏まえた作品を制作し、風情ある町屋等で展示します。
住民や来訪者は単に作品鑑賞を鑑賞するだけでなく、鑑賞をきっかけに作品が制作された背景にある歴史や文化、会場の町屋や店舗等の空間、そしてそこで営まれている暮らしを含めた地域の魅力そのものを知る機会となります。
また、制作過程でのアーティストと住民との交流がプロジェクトの枠を超えた新たな動きに繋がることもあります。
アーティストによる
ワークショップ
招聘アーティストの制作を体験するワークショップも継続して開催してきました。
アーティストと住民が作品を共同で制作する企画はもちろんですが、新たな地域資源の活かし方を既に地域と関わりを持ったアーティストと共に考え、創作に繋げる企画も行っています。
小須戸縞を用いた企画や演奏会イベントで使用する「糸巻あんどん」の再生に繋げた企画等はその例と言えます。
トークイベントの開催
2016年からは様々なゲストを招いてのトークイベントも開催してきました。
全国各地で多数のアートプロジェクトが立ち上がる状況の中、多様なゲストと交流・情報交換することで、当プロジェクトの独自性や継続性を参加者と共に整理・共有すると同時に、プロジェクトの方向性やその先に目指す地域の姿について再確認・再認識する機会にもなっています。
新たな拠点「町屋ラボ」の
整備と活用
2018年の水と土の芸術祭に合わせて、プロジェクトの新たな拠点となる「町屋ラボ」の整備に着手しました。
それまで拠点にしていた町屋ギャラリー薩摩屋は、アーティストの滞在制作の拠点としては課題も多く、同時に地域の空き家対策となる新たな一手を打ちたいという考えもありました。
活用できる空き家を探した結果、かつて桶屋だった空き家を借用することになり、DIYで簡単な整備をして、「町屋ラボ」として活用を始めました。2019年以降は本格的にプロジェクトの拠点となり、近年では定期的なフリマイベントの開催など、活用の幅が広がっています。
新潟市の文化政策・文化事業との関係
新潟市では2009年から2018年にかけて水と土の芸術祭が計4回開催されました。
プロジェクトの立ち上げのきっかけ、アーティストの来訪は2012年の芸術祭です。それ以後、芸術祭に関連した補助金などを活用し、プロジェクトを継続してきました。
また、町屋ギャラリー薩摩屋は、新潟市文化政策課主催の文化施設の在り方検討WSの結果を受けて開館することになった経緯があります。
この区内文化施設の連携の枠組みを活かして、プロジェクトでは、2013年と2017年に新潟市新津美術館との連携を図り、参加アーティストの市民ギャラリーでの作品展示などを行いました。
2018年で芸術祭が終了し、2019年度にはプロジェクトの実施体制や拠点も変更したため、こうした市の文化事業や文化施設との連携には積極的に取り組んでいませんが、2023年度には新潟市中央区のゆいぽーとで「小須戸ARTプロジェクト紹介展」の実施に協力する等、違った形でのプロジェクトの広げ方を検討しています。
プロジェクトの成果とこれから
これまでのプロジェクトの継続により、プロジェクト自体も小須戸という地域も徐々に注目を高めてきたように思います。
2015年の水と土の芸術祭では市民プロジェクトの中でも高い評価を得ることができ、2016年にはアサヒ・アート・フェスティバルへ参加して東京や京都で小須戸の名を冠した企画を実施できたほか、2017年11月には、当プロジェクトの開催が要因の一つとなって、小須戸地区が新潟市の移住モデル地区に指定されました。
その後2018年で水と土の芸術祭が終了し、翌年にはプロジェクトの実施体制や拠点の変更などを経て、コロナ禍もできる範囲で活動を継続してきました。その結果、2023年4月には小須戸の町中で演劇公演が行われる等、新たな取り組みの実現に繋がっています。
プロジェクトや地域の活動はまだまだ発展途上、小さな取り組みではありますが、それを記録し発信することが必要と考え、このページを制作しました。
背景と目的
1.小須戸地区の特色と課題
新潟市秋葉区の小須戸地区は、江戸から明治、大正にかけて信濃川舟運の川湊として栄えた在郷町です。
地区内には当時の繁栄の名残を伝える町屋の町並みのほか、伝統的なお祭りや機織り、花卉栽培といった特徴的な産業など、様々な地域資源が残っています。
一方で、地域の現状として、人口減少・高齢化が進んでいるという事実があります。
国勢調査の情報を確認すると5年間で約8%の人口が減少し、高齢化率は5%増加しています。
また、商店の減少や町の空洞化も進んでいます。小須戸商工会の実態調査によれば、商工会の会員数は10年で3割減、中心商店街である本町1~4にかけてでは、4割近く減少しています。
人口減や店舗の廃業による空き家の増加に加え、2010年には本町通り沿いの町屋密集地で火災が発生し、延焼により23棟が全半焼する影響もあり空き地も増えてきました。
人が減り、店が減った結果、地域の特色である歴史文化も危機的な状況といえます。
2.町屋ギャラリー薩摩屋の開館と水と土の芸術祭2012
小須戸本町通りのほぼ中央、小須戸商工会館の向かいに位置する「薩摩屋」は、2005年に酒店が廃業し、以降は空き店舗となりました。その後、2009年に地域のまちづくり団体「小須戸町並み景観まちづくり研究会」が、水と土の芸術祭2009の開催に合わせて薩摩屋を清掃・整備し、まち歩きの休憩所として活用を図りました。
2010年以降は小須戸小学校区コミュニティ協議会(現在は小須戸コミュニティ協議会)が管理・運営を担い、2012年4月には「町屋ギャラリー薩摩屋」として土・日・祝日の定期開館を開始しました。そして、その年に開催された水と土の芸術祭2012の「アートプロジェクト」の作品展示会場となりました。
アーティスト、南条嘉毅さんの作品制作や展示を通して感じられたアートによる発信力、場所の見え方の変化や新たな気付き、さらには、新潟市新津美術館をはじめとした区内文化施設の連携の枠組みのより効果的な活用という課題を踏まえて、翌年の2013年以降、薩摩屋を活用した独自のアートプロジェクトを企画しました。
3.町屋を中心とした活動による地域の変化
地域衰退の兆しが見える一方で、小須戸地区では2007年からは町屋を巡るまち歩き等、町並みまちづくりの取り組みが進められてきました。
まち歩きには延べ400名以上の参加者があったほか、小・中学校と連携した景観学習の取り組みは平成24年度都市景観大賞「景観教育・普及啓発部門」優秀賞を受賞し、同時に地区内の数軒の店舗や住宅で新潟市の景観整備助成事業「なじらね協定」を活用した外観改修が進められてきました。
また、2012年に町屋ギャラリー薩摩屋が開館して以降は、空き店舗や空き地に新規出店が相次ぎました。町屋を活用したカフェや飲食店、私設の美術館などが立て続けにオープンし、メディアに取り上げられることも増え、地区への来訪者が徐々に増えてきました。
こうした動きを加速させるべく、2014年には新規出店者などにも協力を要請し、小須戸ARTプロジェクトとして地域のアートプロジェクトに活動を拡大しました。
2017年には町屋を中心とした活動への評価、そして当プロジェクトも要因の一つとなって、小須戸地区は新潟市の移住モデル地区に指定されました。
4.地域の変化に対する仮説と、AIRへの期待
①、②、③の状況を踏まえ、地域の現状に対して仮説を立てました。
以下の図をご覧ください。
地域の住民にとって当たり前の「町屋」が地域に変化を起こしつつあるように、住民にとって当たり前の地域資源に価値を見出す人が存在することが、変化の起点と考えます。そして、新潟市では芸術祭が開催され、それに伴う補助金等によるアート活動への支援が行われていました。
こうした状況を活かして、アートやクリエイティブな活動を通して地域資源の価値を内外に発信していくこと、外部人材などの地域に関わる人、特に若者やクリエイティブな人材を増やして行くこと、そうした活動から新たなコミュニティを創出していくことが重要ではないかと考えています。
そして、そのためにはアーティスト・イン・レジデンス(AIR)や、それによるアートプロジェクトが有効ではないか、という仮説です。
外部から地域にアーティストが入ることは、地域に様々な影響を与えます。それは「作品を制作・発表することで、多くの人が地域を訪れ、賑わいが生まれる」という単純な話だけではありません。
例えば、アーティストがリサーチを行うことで住民が気付かない新たな地域資源を見出すこと、制作にあたって地域資源とひとや場所との新たな関係性を構築すること、作品として発表することでの情報発信や、来場者と地域住民との新たな交流を生み出すことにも意義があると考えます。
5.プロジェクトの目的
上記をふまえ、本プロジェクトの目的を下記の図に表します。
地域外からアーティストを招くこと、アート作品を通して地域外から参加者を呼び込むことから、「地域資源の魅力発信」や「テーマ型コミュニティ(新たなコミュニティ)の創出」そして「まちの活用」など、既存コミュニティ以外、地域外に目を向けた部分が表面的には目立つかもしれません。
しかしその裏には、地域コミュニティの内側、町に住む人々に向けた「地域資源の再発見」の機会の提供や「地縁型コミュニティ(既存コミュニティ)の活性化」、そして「まちの持続」に繋げていくことを常に意識して活動しています。
活動・関連年表
年月 | 出来事・取り組み |
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2009.9~10 | 小須戸町並み景観まちづくり研究会が、空き家の町屋「薩摩屋」を改修し、建物を公開。(水と土の芸術祭2009地域プロジェクト) |
2010.7 | 小須戸本町通りで火災発生。町屋の密集地区で出火し、延焼により被害が拡大。22棟が全焼、1棟が半焼の被害を受ける。 |
2012.4~ | 小須戸コミ協が「薩摩屋」を「町屋ギャラリー薩摩屋」として、土・日・祝日の定期公開を開始。以後概ね月替わりで展示企画を実施。 |
2012.7~12 | ●水と土の芸術祭2012 町屋ギャラリー薩摩屋を会場に、南条嘉毅の作品「信濃川」の展示が行われる。来場者への対応や作品の管理を小須戸コミ協が担う。 |
2013.1 | 小須戸本町通りに、空き町屋を改装した「町屋カフェわかば」がオープン。 |
2013.8 | 小須戸本町通りに、空き町屋を改装した「和食ダイニングあかり庵」がオープン。 |
2013.11~12 | ●薩摩屋ARTプロジェクト(共催:新潟市新津美術館) 自主企画として作家を招聘し、「薩摩屋」と「新津美術館市民ギャラリー」で作品展示やWSを行う。 |
2014.2 | 小須戸本町通りの火災の跡地に新築のカフェ「CAFE GEORG」がオープン。 |
2014.9~10 | ●小須戸ART プロジェクト2014(みずつち文化創造2014市民プロジェクト) |
2014.10~11 | ●東京で小須戸‐ KOSUDO ART PROJECT 2014 in Tokyo ‐(小須戸ARTプロジェクト2014参加作家5名による自主企画) |
2015.6 | 住民ボランティアの手で町屋ギャラリー薩摩屋の旧店舗部の改装を実施。 |
2015.7~10 | ●小須戸ART プロジェクト2015(水と土の芸術祭2015 市民プロジェクト) 7組8名の作家が、小須戸本町通り周辺の7会場で作品展示・WS を行う。 |
2016.2 | 小須戸本町通りの空き町屋(旧割野屋)が「雛の町屋」としてオープン。 |
2016.9 | ●京都で小須戸(共催:FEEL KYOTO) 小須戸ART プロジェクト2015 参加作家したてひろこが主宰する「FEEL KYOTO」で、プロジェクト参加作家が展示等を行う。 |
2016.9 | ●小須戸ART プロジェクト2016(アサヒ・アート・フェスティバル2016参加企画、みずつち文化創造都市2016市民プロジェクト) ※参加作家3名。他に過去参加作家7名がWSやトークゲスト等で参加。 |
2016.11~12 | ●東京で小須戸2016、小須戸×306号室 |
2017.8 | ●野原万里絵個展「黒をめぐる話」(共催、新潟市新津美術館) |
2017.9~11 | ●小須戸ART プロジェクト2017(みずつち文化創造都市2017市民プロジェクト) |
2017.11.22 | プロジェクトの実施が一つの要素となり、小須戸地区が新潟市の移住モデル地区に指定される |
2018.7-10 | ●小須戸ART プロジェクト2018(水と土の芸術祭2018市民プロジェクト) |
●水と油の芸術祭2018 -秋葉区民が仲良くする方法を秋葉区民と考える-(水と土の芸術祭2018地域拠点プロジェクト) | |
●KOSUDO TEXTILE WINDOW 2018 -まちをしつらえる、いろどりテキスタイル-(水と土の芸術祭2018市民プロジェクト) | |
2019.4 | プロジェクト実施体制を変更。有志による任意団体「小須戸ARTプロジェクト実行委員会」を結成し、活動拠点を町屋ラボに移す。 |
2019.9-11 | ●小須戸ART プロジェクト2019 |
2020.9 | ●小須戸ART プロジェクト2020 |
2022.3 | ●小須戸ART プロジェクト2021+ |
2022.10-11 | ●小須戸ART プロジェクト2022 |
2023.4 | 「『なめとこ山の熊のことならおもしろい。』」ほしぷろ⻄会津・中郷・小須戸ツアー公演実施協力 |
2023.10-11 | ●小須戸ART プロジェクト2023 |
書籍・メディア等掲載歴
書籍・メディア等
タイトル | 著者 | 出版社 | 出版年 |
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芸術祭と地域づくり ー“祭り”の受容から自発・協働による固有資源化へー | 𠮷田隆之 | 水曜社 | 2019 |
現代アートと他分野との間に立つ仲介者のあり方‒地域型アートプロジェクトの現場調査から‒ 秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科複合芸術専攻 平成30年度修士論文 | 蛭間友里恵 | 2019 | |
アートツーリズム 芸術祭と都市 立教大学観光学部演習3年A/B 2018年・2019年度報告書 | 立教大学観光学部 | 2020.3 | |
蒲原平野の在郷町・小須戸の町並みまちづくり(会報誌「報」、シリーズ~地域の魅力発信~のコーナーに寄稿) | 公益財団法人日本ナショナルトラスト | 2022.1 | |
未来のチカラin新潟市 秋葉区編 | 新潟日報朝刊 | 2022.7.20 | |
akiha navi book 秋葉本~秋葉区の店と観光~ | 2022.9.1 |
プロジェクトに関する講演等
講演名 | 年月日 |
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「水と土の芸術祭と小須戸ARTプロジェクト -都市型芸術祭と地域アートプロジェクトの関係性-」大阪公立大学大学院都市経営研究科ワークショップ・公開シンポジウム | 2018.12.21 |
「京都で小須戸 芸術とまちづくり交流会」 | 2021.3.27 |
「小須戸ARTプロジェクトの10年 -小規模プロジェクトの継続と地域の変化-」大阪公立大学大学院都市経営研究科ワークショップ・公開シンポジウム | 2023.6.16 |
「アートプロジェクトとまちづくり」下越南倫理法人会モーニングセミナー | 2023.9.14 |
「地域で育むアートプロジェクトの可能性」ゆいぽーと「小須戸ARTプロジェクト紹介展」関連トークイベント | 2023.10.9 |